ハイパフォーマンスチームとは|スポーツ現場の情報共有と役割分担

公開日:

2026.9.25

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スポーツの現場で、競技力の向上と選手の健康を同時に支えるために、コーチや専門スタッフが協働する体制を「ハイパフォーマンスチーム」と呼びます。企業の組織論で使われる同じ言葉とは別に、ここでは監督、S&Cコーチ、アスレティックトレーナー、スポーツサイエンティスト、スポーツ栄養士、医療スタッフなどが一つのチームとして機能することを指します。

ただし、専門職の役職名をそろえるだけでは、日々の連携はできません。トレーナーが把握している選手の違和感が、練習を組む監督には伝わっていない。S&Cコーチも別の記録を見て負荷を考えている。スタッフがそれぞれの仕事に取り組んでいても、情報が共有されなければ、選手への指示が食い違うことがあります。

この記事では、専門スタッフをつなぐために決めておきたい共通の課題と、情報を使う手順を整理します。

専門性が働くためには共通の課題が必要

例えば、体力測定で10mスプリントの記録が伸びていない選手がいたとします。S&C担当は測定条件とトレーニング履歴を確認します。コーチは試合中にどの場面で加速が必要だったかを振り返ります。本人は練習中の感覚や困っていることを伝えます。

同じ記録でも、立場によって確認できる情報が異なります。最初に「次の測定までに何を確かめたいか」を共有すると、それぞれの専門性を同じ課題に使えます。

同じ測定記録でも、S&C担当・監督コーチ・選手本人で確認できる情報が異なることを示した図

JSC(日本スポーツ振興センター)のスポーツ医・科学支援事業でも、複数分野の研究者や専門家が競技団体と課題や達成方法を考える仕組みが示されています。トップレベルの支援体制をそのまま部活動へ移すのではなく、課題を共同で整理する考え方を自分たちの人数に合わせて取り入れます。JSCのスポーツ医・科学支援事業

共有する情報と判断する人を分けて決める

全員がすべてを入力し、すべてを判断する運用は責任が曖昧になります。誰が情報を更新し、誰に確認して次の行動を決めるかを整理します。

選手・S&C担当・トレーナー・監督コーチが共有する情報と役割を整理した表の図

担当

共有する情報の例

役割の例

選手

体調の回答、練習の感覚、困っていること

変化を伝え、説明を受けて取り組みを確認する

S&C担当

測定結果、負荷の記録、前回からの変化

身体面の課題と確認事項を整理する

トレーナーや医療担当

ケガの経過、専門的な評価、活動上の制限

専門性と担当範囲に応じて状態を評価し、必要な判断につなぐ

監督やコーチ

練習の目的、実施内容、競技中の様子

共有された条件を踏まえて練習を組み立てる

この表は役割分担の例です。小さなチームでは一人が複数の役割を兼ねても構いません。ただし、専門外の医学的判断まで引き受けるという意味ではありません。必要に応じて外部の専門家へ相談できる連絡経路を決めておきます。

練習前の共有は確認事項を絞る

選手全員の数値を毎朝読み上げると、重要な変化が埋もれます。練習前は、その日の対応に関わる情報を中心に確認します。

例えば、普段と異なる回答があった選手について、確認担当者を決めます。ケガから復帰中の選手については、現在の参加条件に変更がないかを確認します。未確認の情報が残っていれば、確定済みの内容と区別します。

連絡文も、受け手が行動できる形にします。「A選手は要注意」だけでは、コーチは何をすればよいか分かりません。「A選手は朝の回答に普段との差があるため、S&C担当が練習前に本人へ確認する。参加内容は確認後に共有する」と書けば、担当と次の連絡が明確になります。これは共有方法の例であり、特定の選手の事例ではありません。

連絡文の書き方の比較。「A選手は要注意」では動けず、担当と次の連絡まで書いた例を示した図

ケガから復帰中の選手について何をどこまで共有するかは、ケガの経過と参加条件を共有する方法で具体的に扱っています。

CORISEでは用途ごとに見る画面を決める

共通のシステムを使う場合も、全員に同じ量の情報を見せる必要はありません。CORISEのダッシュボード、レポート、コンディション管理、ケガ管理を、見る目的に応じて使い分けます。CORISEの機能紹介

朝の確認では、当日の回答と最近の推移を見る画面を使います。測定後のミーティングでは、対象期間や選手をそろえた比較を使います。個人面談では本人の記録と前回からの変化をまとめたレポートを用意します。

体重を例にすると、個人の折れ線グラフで答えられるのは「本人の記録がどう変わったか」です。チーム全体のヒストグラムで答えられるのは「どの範囲に何人いるか」です。前者と後者を取り違えなければ、同じデータを異なる会話に利用できます。

なお、栄養や医療などすべての専門業務が、一つのシステム内で自動的に完結するとは限りません。画面に集約する内容と、面談や専門家への相談で扱う内容を分けて設計してください。

決めた内容を選手へ返すところまで共有する

スタッフだけが合意しても、選手が次に何をするか分からなければ実行にはつながりません。本人に見せるレポートやコメントには、確認できた事実と、次に取り組むことを分けて残します。

例えば測定後に「加速局面を見直す」と決めたなら、どの練習で何を確認し、いつ振り返るかを本人と話します。練習日誌に感覚を書いてもらい、スタッフが返信すれば、次の面談でその記録を参照できます。

共有の成果も確認しましょう。重要な情報の伝達漏れがなかったか。誰が対応するか決まっていたか。選手が次の課題を説明できたか。勝敗だけでは分かりにくい運用上の問題を、こうした問いで点検できます。

少人数のチームは一つの共有ルールから始める

最初の取り組みとして、練習前の確認だけを整えてみてください。見る項目、確認担当者、監督へ伝えるタイミングを決めます。担当者が不在の日に誰が代わるかも含めて、一週間試行します。

情報を共有する範囲は、選手の同意やチームの規則を踏まえ、業務上必要な範囲にします。全員が同じ選手を支えていることと、個人の情報を無制限に閲覧できることは別です。

CORISEの導入相談では、在籍する専門スタッフの人数だけでなく、今どの連絡に困っているかをお聞かせください。少人数で運用する場合も含め、必要な画面と共有方法を検討できます。

CORISEでのチーム内共有について相談する