

公開日:
2026.2.7
監督プロフィール 檜山 和孝(ひやま かずたか)
神奈川県立荏田高校、東洋大学出身。 選手時代は激戦区・神奈川において、関東大会予選および全国高校総体予選(参加約200校)で共に県第3位という輝かしい成績を収める。
指導者として横浜創学館高校に着任後は、チームを県内屈指の実力校へと押し上げた。特に近年の約16年間においては、1〜2年に一度のペースで県5位(ベスト8)以上の成績を残し、常に神奈川の上位争いに食い込む安定した強さを築き上げている。
現在はJユースチームも所属する高レベルな神奈川県U-18リーグ2部(K2)にて研鑽を積む。「一戦必勝」を掲げ、強豪ひしめく神奈川から悲願の全国大会出場、そして全国制覇を虎視眈々と狙う。
強豪校がひしめくサッカー激戦区、神奈川県。
約200チーム存在する神奈川県下で、ここ数十年県大会ベスト8やベスト5に進出し、今シーズン(2025年)もリーグ昇格を果たすなど、安定した強さと確かな存在感を放っているチームがある。
横浜創学館高校サッカー部だ。
しかし、その「崩れない強さ」の裏側に、安定して勝ち星を積み重ねることができず苦しい時もあった。
彼らは、いかにして「崩れない強さ」を築き上げてきたのか?
その裏側には、客観的な「測定(ソクテイ)」と、選手の心に火をつける「コーチング」の存在があった。
2022年から2023年にかけて、チームは思うような結果を残せない苦しい時期を過ごした。
勝ちきれない当時のチームの最大の課題は、「チーム全体のメンタル面だった」と監督は振り返る。
「(相手FWに)ついていけない、予測が悪い」
「お互い叱咤激励できない」「頑張れない」
「セットプレーで競れない」
「やっている振りをする」
「できていると勘違いしている」
そのシーズン中に、チームの「心」の問題を象徴する出来事があった。
県リーグで鎌倉高校に0-3で完敗し、しかも次は中1日で住吉高校戦という過密日程。
通常であれば、直後はリカバリーに充てるか、翌日に敗因を追及するトレーニングを行うことも考えられる。
しかし監督が選んだのは、敗戦直後に学校へ戻り、敗因の抽出とそれを踏まえたトレーニングを短時間で実施することだった。
さらに翌日の練習も、あえて「いつも通りのトレーニング」を行った。
そして、敗戦したその日の最後のミーティングで次戦への覚悟を語り、選手の心に火をつけてチームに一体感をもたらすことに成功した。
「リーグ戦は次の学年に良いステージを渡すための"たすきがけ“のようなものである」
何年も前に卒業した先輩も、保護者も見に来ている。
名も知らない先輩、保護者たちに応援してもらい、今の後輩たちと今後入学してくるだろう名も知らない後輩たちに良いステージを明け渡す、これが現役生の役割である」
すると選手たちは一念発起し、中1日の試合で、7-0と圧勝した。
監督は、自チームの競技力や戦術理解、相手チームの分析も大切であるが、一心不乱、一戦必勝でやりきる姿勢。 「メンタルの比重は非常に大きい」と改めて感じたという。

この「メンタルの改善」とともに、チームの勝率を引き上げたもう一つの要因がある。
それが、S-CADE.による「フィジカル測定」の導入だった。
「試合の『勝った負けた』の結果は見える。でも、例えば『ボール扱い』がどれだけ上手くなったかは、具体性にも欠ける。」
なぜフィジカル測定だったのか? 監督の答えは明快だった。
「(フィジカルは)2、3ヶ月で変わる。子どもたちも、その都度数値をみれば、前回から伸びてるか伸びてないかが一目瞭然。」
日々の練習の成果が「客観的な数値」として目に見えること。それが「頑張ろう」という選手のモチベーションに直結した。
「全種目で、前回を上回るように」。
曖昧な「頑張れ」ではなく、「数値を伸ばす」という明確な指標が、選手たちの意識を変えていった。
測定は、あくまでスタートラインだ。横浜創学館の本当の変革は、そのデータを「どう活かすか」という点にある。
この取り組みを支えるのが、S-CADE.から派遣される山口コーチ(フィジカルコーチ)との連携だ。山口コーチは週に1〜2回、情熱を持って選手と向き合う。
だが、もし選手に「甘え」が見えたらどうなるのか。
「(山口コーチから)『今日の子たち、取り組みが甘かったです』と(報告が)来たら、 山口コーチに怒らせるんじゃなくて、私が喝を入れなくちゃいけない。特に器具を使ったトレーニングは取り組みが甘い、悪い、と大怪我をする恐れがあります。」
檜山監督のスタンスは明確だ。
「勝利したら、それは選手やスタッフのおかげ。敗北や怪我は、すべて檜山の責任」
そう言い切る覚悟が、チームの根底にある。
外部コーチである山口コーチが客観的な評価を伝える一方で、チーム全体の空気を引き締め、統率するのは監督の仕事だ。
時には「今日の練習は取り組みが悪い。これでは強化にならない、もう一回やり直し」と、姿勢が甘い部分を徹底的に反復させることもある。
それは決して理不尽な厳しさではない。 選手たちの競技力を向上させたいからこそ。勝利を掴ませたいからこそ。
客観的な「測定(数値)」を重要視し、その数値を高めるための妥協なき「コーチング(指導)」が必要となるのだ。

S-CADE.の山口コーチが選手のフォームを細かくチェック。「正しいやり方」を徹底することが、数値の向上と怪我の防止に繋がる。
横浜創学館の強さのもう一つの秘密は、測定で得られたデータを基に、選手一人ひとりの特徴に合わせたトレーニングを実施している点にある。
全体で同じメニューをこなすだけではない。
S-CADE.の測定で得られた「走速度プロファイル(スプリントのどの区間が速い/遅いか)」や「力速度プロファイル(パワーとスピードのバランス)」に基づき、個々の課題に合わせた最適なトレーニングメニューが提供される。
例えば、瞬発力(力)は強いがトップスピード(速度)が足りない選手には速度を高めるメニューを、逆にトップスピードはあるが加速(力)が弱い選手にはパワーを高めるメニューを重点的に行う。
<トレーニングメニュー例>

このように、客観的データに基づいて「個」を最適化し、それを監督とコーチが「チーム」として徹底させる。この仕組みこそが、選手の成長を劇的に加速させている。
この徹底した「ソクテイ✖️コーチング」は、具体的な成果として表れた。監督も「これはすごい」と目を見張るのが、「(50m走)7秒の(子)が6秒になった」という劇的な成長だ。

測定とトレーニングを重ねるごとに、A選手のタイムは着実に向上(7.33秒→6.64秒→…→6.44秒)。「やれば伸びる」という実感を得た。
数値という「目に見える成果」は、選手の行動を「自発的」に変えていった。
「成績がアップすると、さらに高めようとし、内容にもこだわるようになる。具体的には、プロテインをしっかり飲むようになったり、(トレーニング中に)もっと高めていこうと声かけするようになったり、こういった自発的な行動が良い意味で見受けられた。 」
檜山監督はこう語る。
「楽しくなるんだと思う。勉強して点数が上がれば楽しくなるのと同じ、努力すれば成果が出る、それを実感、理解することが大切」
この「内容へのこだわり」 が、2025年度リーグを無敗で昇格、 の土台となった。そのターニングポイントが、雨の中で行われた「第1節」だ。
2025年3月16日、三浦学苑高校との開幕戦。結果は3-1で勝利した。しかし監督は「最初が肝心」と語り、決して「結果良ければ全て良し」という妥協を許さなかった。
なぜなら、攻撃と守備の内容に「隙」があったからだ。
無人のゴールにグラウンダーで蹴ったシュートが、雨の水たまりで「ゴール前で止まってしまった」場面。
3-0でリードしていた終盤、水たまりのあるピッチで無理にパスを繋ごうとしてボールを失い、さらにカバーの甘さも重なって失点した場面。
「雨、風、日光、暑さ、レフェリング、相手……。あらゆる環境に左右されず、環境に則したプレーをする」 常日頃からそう言い聞かせてきたことが、この場面ではできていなかった。
試合後、監督は「リーグでは得失点の積み重ねが昇格・降格を左右する」と指摘。「無失点にこだわること。5点取るまで、そして終了の笛が鳴るまで決して安心しないこと」を求めた。
「結果良ければ全て良しではない」 勝利に浮かれることなく、内容への妥協を許さない。この第1節で行った徹底的な意識づけが、揺るぎないチームの土台となった。
最後に、伸び悩むチームへのアドバイスを求めると、監督は力強くこう語った。
「これをやっておけば絶対勝てるという練習はない。『学問に王道なし』と同じ。 様々なトレーニングや練習試合を積み重ね、競技力・メンタリティーを高め続けるしかない。」
新チームの目標を尋ねると、「全国大会出場、そして全国優勝したい」と返ってきた。 常に一番高い場所を目指し、努力を続ける。一戦必勝で全国優勝を目指す、横浜創学館サッカー部に現状維持の言葉は見当たらない。